クイーンズスクエア横浜

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 建築家フォーラム第152回は、設計事務所・日建設計の代表取締役社長に2015年に就任した亀井忠夫氏が“建築家”として登壇した。 テーマは「Space for All」。亀井氏が建物の設計によって‟パブリック”をどのように意識し形にしてきたか、これまでに関わった国内外のプロジェクトを通じて語った。

 亀井氏が関わったプロジェクトは、まちをつくり替えるくらい大規模なものが多い。国内のプロジェクトの場合は、1階や地下部分に大規模なパブリックスペースを取り込み、まちや交通との連続性を生み出す点に特徴がある。パブリックスペースはまちや周辺環境とシームレスにつながる。同時に、プロジェクトごとにクライアントが提示したテーマや地域性を読み解き、新たな形を残してきた。

 亀井氏の代表作のひとつに「クイーンズスクエア横浜」がある。ここでは新たに開通する地下鉄みなとみらい線のプラットフォームを地下5階に配置し、ダイナミックなアトリウムと一体化したパブリックスペースを設計した。建物上部には大きな開口部を設け、自然光が地下5階のプラットフォームまで明るく照らす。このアトリウムを通じ、地下鉄を降りた瞬間には人の動きや賑わいを感じられ、その一方でアトリウム上部からは車両を眺めることができる。

 同じく代表作の「虎ノ門琴平タワー」では、建築家、伊藤忠太氏が監修した東京都選定歴史的建造物の社殿を残しつつ、既存のビルを高層オフィスビルに建て替えるという課題に取り組んだ。新たなビルの1階に高さ10.5mのピロティを設け、その部分を参道として、桜田通りから西側への区道に自由に通り抜けができるように提案。この参道や境内はまちに向かって開かれ、誰もが通り、憩えるパブリックスペースとなった。また、参道などは公開空地でもあり、総合設計制度による建物の容積率緩和というメリットも生み出した。

 一方、近年、日建設計が連続してコンペで勝ち取った海外のプロジェクトは、やはり建物をパブリックの核と捉えているものの、まちというよりも一定の都市を再生させるスケールの大きさだ。

 たとえば、シンガポールの「レールコリドー国際設計コンペティション」のマスタープラン部門で優勝した提案「LINES OF LIFE」。全長24Km、計100ヘクタールもの旧マレー鉄道跡地に主催者が掲げたテーマは、“非凡で感性を刺激するパブリックスペースとしての再生”だった。日建設計の提案は東西のコミュニティを分断していたこの鉄道跡地を、「スティッチ(縫い目)」として繋ぐ役割へと変換させるもの。沿線に点在する多様な民族のコミュニティをこの新たなパブリックスペースが繋ぐよう、それぞれの場所にふさわしいアクティビティが生じる工夫を盛り込んだ。

 スペインのサッカーチーム、FCバルセロナのホームスタジアム「CAMP NOU」(1957年竣工)の全面改修計画提案で日建設計+パスカル-アウジオ・アルキテクテスチームが重視したのは、新スタジアムがパブリックスペースとしてバルセロナのまちと調和していることだ。外に向かって開かれ、まちと一体化し、スタジアムからはまちが見下ろせ、まちからはスタジアムが常に目に入るように計画された。周辺にはミュージアム等の公共施設を併設し、イベントの有無にかかわらず市民でにぎわう場を目指している。既存の建物は躯体を生かしながら客席を約6000席増とし、新たにドーム型の大屋根を掛ける。

 ただし、パブリックスペースを成立させるためには、建物の設計(=ハード)のみならず運営(=ソフト)が重要だと亀井氏は指摘する。計画しても使われなくては意味がないからだ。また、パブリックスペースに必要な運営のポイントとして、「人が集まる」「既存の建物の新たな使い方が試せる」「人同士が関われる」「宣伝・広報メディアになる」といった4点を挙げた。

 現在、都市の余剰空間を利用して、賑わいを呼び戻すパブリックスペースつくりが注目されている。今後は、設計者もハードとソフトの双方を配慮しながら計画し、市民で賑わうパブリックスペースを生み出す時代になっていくのだろう。

                                       (介川 亜紀)



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