撮影:清水襄
現 国立競技場

写真はこちら

 第134回の建築家フォーラムは、「神宮外苑と国立競技場を未来に手わたす会」のメンバー4人を迎えた。

 タイトル内の言葉を借りれば、大橋智子氏が設計事務所を主宰する“建築の専門家”、上村千寿子、酒井美和子、清水伸子の3氏は“建築の門外漢”になる。とはいえいずれも、地域の施設づくりに対する住民運動やマンション紛争などにかかわった経験をもつ。街づくりや建築行政の在り方に対して高い問題意識を抱く人たちだ。

 話は、国立競技場の建て替え問題を軸に展開した。

 まず、国立競技場の建て替えに関する経緯を整理する。2011年2月、超党派によるラグビーワールドカップ2019日本大会成功議員連盟が国立競技場を8万人規模に再整備するよう決議。久米設計による改修案の検討を経て、建て替えが決定した。その後、国際コンペが開かれてザハ・ハディド案が選定され、2013年には計画地まわりの高さ制限が従来の20mから75mまで大幅に緩和された。

 こうした動きに危機感を覚えた人たちが2013年10月、「神宮外苑と国立競技場を未来に手わたす会」を設立する。以後、同会は公開座談会や外苑ウォークなどを開催し、岩波ブックレット「異議あり!新国立競技場」の出版や日本スポーツ振興センター(JSC)、文科省、東京都、国際オリンピック委員会などへの要望書提出を行ってきた。

 会のメンバーは、新国立競技場を巡る問題点を大きく4つ挙げる。地域の歴史的文脈から外れた巨大な建築計画で景観を損なうこと。建築費や維持費がかかり過ぎること。建築計画の後追いで都市計画の変更がなされたこと。これらを含めた情報公開が乏しく市民意見が取り入れられないこと。こうした問題を踏まえつつ、「次の世代に負の遺産となるような計画にしないため」に活動を続けていると話す。

 聴講者からの質問に対する回答も含めたその後の意見交換は、国立競技場にとどまらず日本の建築行政や建築・街づくりが共通して抱える問題へと話題が広がった。事前協議や住民投票など住民が直接意見を出し合う場がなく、時間をかけて議論する仕組みがない。審議会や有識者会議は、ともすると行政や運営者側のアリバイづくりと化す。

 「それぞれの自治体による許可基準に基づいた開発・建築許可制度を目指すべき」、「これまで多くの建築家はクライアントを助けてきたが、困っている人の助けをしてきたのか」といった指摘も出た。企画・進行を手掛けた幹事の今川憲英氏が「今日出た議論をそれぞれが租借して、自分の次の行動へ結びつけよう」と話を引き取り、会は終了した。

 ところで会場を見回すと、聴講者の顔ぶれは通常の建築家フォーラムとかなり違う。建築の専門家と専門外の人が手を結ぶという今回の問いかけの前には、専門家同士の意識の差という溝も横たわっているかもしれない。

                                      (守山 久子)



活動一覧のページへ戻る   HOME