第132回の建築家フォーラムは、西沢立衛氏を迎えて2014年7月15日に開催された。今回、西沢氏が紹介したのは、SANAAで妹島和世氏と共同設計した作品も含めて9作。2006年竣工のHOUSE Aから実施設計が現在進行中の鶴岡市文化会館まで、あるいは大規模な公共施設から小規模な住宅まで、西沢氏の幅広い活躍ぶりを反映した内容となった。

 紹介作のうち主なものをいくつか分類すると、次のようになる。

 工法の工夫が空間特性に結び付いているのが、瀬戸内国際芸術祭にからんで手掛けた「豊島美術館」と「小豆島の葺田パヴィリオン」だ。

 床から水が湧き出して泉となっていく内藤礼氏のアート作品「母型」を展示する豊島美術館では、低ライズのRCシェル構造で自由曲面の60mスパン空間を生み出した。基礎工事の際に出てくる砂を山形に整えて型枠とし、「ジョイントのないコンクリート壁」をつくり上げている。一方、小学校と神社境内の間のスペースに設けた葺田パヴィリオンでは、四隅だけ接合した2枚の鉄板を泳がせるように広げ、生まれた隙間を利用できるようにした。こちらは造船技術を活用している。

 「スイス連邦工科大学ローザンヌ校ラーニングセンター」とルーヴル美術館別館「ルーヴル・ランス」は、大規模な建物を平面的に展開し、機能のつなげ方を空間構成に投影させた点で共通する。

 ただし、具体的な形態は“動”と“静”という対照的な表情をもつ。スイス連邦工科大学ローザンヌ校ラーニングセンターは前者で、1層の建物が上下方向へ大胆にうねりながら広がり、随所に中庭が挿入されている。接地した部分は建物の入り口に、地上から浮かんだ部分の下部は通り抜けできる動線経路として機能する。スロープによって生じる床面の変化が多様な場所を生み出し、建物への出入りの自由度や互いの活動の視認性を高めている。対して「ルーヴル・ランス」は、ガラスとアルミによるほぼ直線状のファサードが静的な印象を与える。高低差7mの地形を生かしつつ、企画展示や常設展示、交流の場となるエントランスホールなどの棟を平面的に並べ、機能ごとに分節させた。

 住宅事例では、ボックスとなる各部屋を平面的にずらして配置した「HOUSE A」や、各階に部屋と庭を並べた「Garden & House」などが、建物の密集地域にあって外との関係づくりを試みた事例と言える。これらの取り組みに代表されるように、「これからの生活や社会にどう立ち向かうか」や「建物の内外をいかにつなぎ、環境とどう調和させるか」は、近年の西沢氏が設計で常に意識していることだという。

 本編の講演内容に加え、興味深かったのが出席者からの質問に対する回答だ。建築の素材感に対する考え方を問われた西沢氏は、素材に対する自身の扱いについて「まだ保守的で勇気が足りない」と表現し、「あと10年は頑張って試行し、創造的に使えるようになりたい」と語った。その時の西沢作品がどのような境地を切り拓いているのか、期待はふくらむ。

                                        (守山 久子)


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