虎ノ門タワーズ

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 2014年6月17日の第131回建築家フォーラム講師は、鹿島建設の建築設計本部でプリンシパルアーキテクトを務める北典夫氏。氏は特に3.11以降、「住む」こととは何かを考えている、という。講演では、あまたの実績のなかから3つの集合住宅を取り上げ、その設計思想について語った。

 2006年に竣工した『虎ノ門タワーズ』は、オフィスとレジデンスの2棟構成。敷地は起伏ある高台で、歴史の古いエリアだけに周囲の建物の方向性もランダムだ。北氏は初めから、建築のコンポジションを考えたという。ガラスのカーテンウォールのオフィス棟に対し、真っ白なグリッドが際立つレジデンス棟。いずれもストラクチャーがすなわちファサードだ。

 特に鉄筋コンクリート造のレジデンス棟の課題は、構造面の制約だったという。住まいである以上、建物の揺れや音の制御には、オフィスよりはるかに高い精度が求められる。なおかつ、塔状比7対1という類のないプロポーション、鉄骨造のオフィス棟と工期を揃えなければならないなど、難題は山積みだった。

 また、分譲集合住宅であるがゆえに、販売会社や広告代理店の販売戦略上の要望にも応えなければならない。バカラやフェラーリなどの高級ブランド名を用いたのもその一例という。

 住戸内部では、超高層の構造体の力強く骨太なディメンションと、住まいとしての繊細で優しいディメンションのすり合わせを徹底して追求したという。継ぎ目が分からないほど薄いクロスを開発したり、幅木を浮かせて床の振動を壁に伝えないようにしたりなど、その目配りは微に入り細をうがっている。

 この『虎ノ門タワーズ』の設計時には「ユニットから集合住宅を考えるという発想はなかった」と北氏は言う。対して、2009年の『加賀レジデンス』では、ユニットからの発想を意識したそうだ。

 『加賀レジデンス』の敷地は、南に突出した三角形を成す。住戸の間口を広くし、南面が求められる中で、いかにして、分譲集合住宅の命題といえる「最大容積率の確保」を実現するか。北氏の回答は、「人」の字型プラン。東・西・南の三方にウィングを伸ばす建物のフォルムが、同時に東西のオープンスペースを規定している。

 14階建ての高層建築にもかかわらず、壁式・フラットスラブの免震構造。これは鹿島にとっても初めての試みだったという。梁がないことで、構造体にスリーブを設ける必要がなくなり、施工も簡略化できた。ファサードには白いスラブとガラスのフェンスがくっきりとした水平ラインを描く。

 住戸の多くは90~100平米と、都内では得がたい広さ。水回りを核として居室を配置する回遊動線、ビューバルコニーとサービスバルコニーの分離が基本になっている。

 2012年の『中野セントラルパークレジデンス』は、メガフロアオフィスと都市公園、商業施設などを含む大規模開発の一部として計画された。レジデンス棟は賃貸住戸17戸の比較的小規模な建築だ。

 方形の平面の中央にエレベーターや共用廊下、設備を集約し、南北に住戸を配置。東西に2箇所に採光・通風を促す吹き抜けを設けている。建物の四周にバルコニーを回していることもあり、外観には柱とスラブのグリッドが明瞭に現れている。

 以上3つの集合住宅に加え、近年手掛けた戸建て住宅『HOUSE IN SOYONANZAN』と『HOUSE BG』が紹介された。

 講演中、北氏は何度か「ファサードはすべてストラクチャー」という表現を用いた。集合住宅も戸建て住宅も、外観の表情はシンプルを究め、緊張感がある。他方で北氏は「あくまでも内側にいる人の視線から建築を考えたい」と語る。事実、室内のプランや仕様には、快適性や暮らしへの配慮が行き届いている。外見の厳しさと内側の優しさが矛盾なく統合された設計が印象的だった。

                                    (萩原詩子)



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