最初のスケッチは、黒い空の中を大きな雲の隙間からまっすぐに落ちる
光の筒。 それを見た施主の陶芸家・中村錦平氏は、「ここに冴えた風が
抜けていくでしょう」。 私は 「内側から夜が明ける。光を射込む。」と言葉
を連ねた。 34坪の敷地は北側の道路を挟んで青山墓地に面している。
この大きさの中で、住まいだけでなく アトリエをつかず離れずの関係でま
とめる必要があった。まず、敷地の不規則な形に添って、コンクリートの壁
を建て、その中に12角形の内壁を組み込む。さらに12角形を南北の軸線
で二等分し、片方は吹き抜けの中庭にして、もう片方は、関・寝室・食堂・
書斎を積み重ねている。 正方形の部屋は1つもなく、総べて不定形で中
庭に面し、各部屋に中庭から光を導きいれ、風を回すのである。

 光学機器を扱う商社のオフィス・ビル。 山手線・新大久保駅に近い線路
沿いにある。場所がら、ここでオフィス空間を機能させるためには音を消す
ことが大前提である。玄関ホールは9o厚の鉄のドーム。 天井も壁も白に
して、視覚的にもノイズのない空間としている。構造は、例えれば外側のコ
ンクリート壁が大きな器で、そのなかに水を入れ、小さな器(3階部分)を浮
かせた形である。 大きな器と小さな器の間、つまり外側のコンクリート壁と
内側のガラス壁との空隙が トップライトとなっている。 この内側の壁はスリ
ガラスになっていて、トップライトから落ちてくる自然光がガラスを通して綺麗
な乳白色の光となって二階にあるメインの事務空間を取り囲む。3階の役員
室は、猥雑な外の世界から遊離した白いテリトリーである。天井はカットした
鉄の球体を連続させたドームになっている。

 外から見てこの家が異彩を放つのは、色とともに極端に少ない窓の数であ
る。西側に楕円形の窓、南側に壁をえぐるようにして四角い大きな窓、合計
2つの窓しかない。住宅というのは、小さくても大きくても最低限必要な部屋
数というのは変わりなく、しかも、部屋の分だけ窓が欲しくなる。それを小さな
敷地でみながやると、日本の都市部に典型的な「町並み」となる。ここでは窓
を1つにまとめ、そこから4つの部屋にを採光することにした。南側にある3m
の四角い窓がそれである。 この開口は、1階の2つの寝室・地下・2階の 計
4ヶ所に接し、それぞれに異なった質の光を空間に放つ

  ここは工房を備えたケーキショップが敷地内にある、高名な料理研究家の
住宅である。要は、「商品であるケーキ」と「客」という、両方のための小さな
晴れ舞台になるという空間をつくるべきだと考えた。たかだか1.5mの階段も、
手すりは片側のみでキャンティレバーとなっており、まるでひな壇を降りてい
くような何とも言えぬ緊張感がある。 一方、店よりも先に手がけた住宅につ
いては、床・ ・柱・フォサードをそのまま残して改築している。下階にはプライ
ベートな部屋を配置し、上階は接客に機能する空間づくりとした。


 木々の茂った長さ60m、600坪強の土地に築90年の農家。その建てか
えである。敢えてここでは木造と瓦屋根による昔からの素材と工法を選んだ。
施主の一族が今までそうしてきた様に、老若男女が共に暮らし 何代もが住
み続けられる住居を前提としている。長さ30cmの切妻屋根は、とりとめの
ない場所に 幾何学柄を挿入することで、外部空間をつかみ、秩序を与える
屋根のあり方を求める。瓦のかけらを敷きつめた光庭は、陰気になりがちな
北側に穏やかな光と風を導く。

  30坪の敷地に建ち、南側は道路越しに緑の深い公園に面している。まず
地下6メートルを掘り下げ、U字型に曲面加工した30mm圧の鉄板を地下か
ら屋上まで15m立ち上げた。 これを33cm厚のコンクリートによるドーム状の
屋根と外壁で囲った形である。 鉄の壁にしたのは、もし コンクリートで内壁も
つくったとすれば、鉄板壁の方が延床面積を広く確保できる。東京の土地や
面積を考えると、鉄の壁にコストをかけても 土地を含めての採算で考えると
利を得る事になると考えたからである。「家の中にある離れ」は 目の前の公
園に向かって全開する。見渡
す景色は前面桜である。

敷地面積は約300坪。ここでは正面性のない,前方位的な建築を意図とした。
地表すれすれから見上げても、丘の上から見おろしても、どこから見ても正面
も裏面もない。雑木林の中に浮かんでいるような軽さとスケール感を具体化す
る方法を模索した上、大きな集成材加工を得意とする造船業の技術を起用。
外壁・内壁と共に杉材を使っているが地上から空へ吹き上げるように斜めに
張り、曲げ、よじる。内壁は、左官下地に使用されるスギの木擦り版をうねる
ように張りつめてそのまま仕上げ材としている。

蕣居の「」は、アサガオを意味する。 花びらの一枚は約3m×10m、
厚みは16mある。この鉄板曲面は、ガスタンクをつくる技術を使って加工
した。構造は 曲面自体が持つシェル効果によって成立させている。外側
は、メンテナンスが容易で錆びを防ぐ亜鉛溶融メッキ仕上げである。一方
で、鉄の内側は細かく割いた桐材で仕上げた。夜が明けると、上階のベッ
ドから徐j除に明るくなっていき、朝日を感じながら階段を降りていき、一日
が始まる。そんなアサガオのストーリーを内包した家である

ここでは、コートハウスという方法を選んでその咀嚼と純粋化を思考し、
いくつかの新しい試みをしている。ひとつには、地下に中庭をつくり、施
工の困難を承知の上で庭の形態を楕円にした。ここを約11mの最上部
までガラス張りにして、中庭を内部空間の骨格そのものとする。中庭は
全体の容積比で3割を占め、どの階においても、内部空間と中庭とが密
接な関係を持つ。逆に見れば、家の中に大きな真空が存在することにな
る。その空は、何かで埋められる空白ではなく、思考の波長を整え透明
にする、それ自体で、充実した空なのである。

 雪国に家を設計するとき、屋根の形と外壁の材料の選択が最初の分かれ道
である。この住宅では敷地に少し余裕があり、また重たい構造物にはしたくな
かったので、ベレー帽のような緩やかに傾斜する曲面の屋根を き、雪を軒縁
から少しずつ地面へ滑らしている。 内部空間は、床・柱・建具・家具まで、この
地方で産出したタモ材を無垢で使っている。天井と壁は、北海道の北部で採
掘された珪藻土を混ぜた土壁で仕上げた。珪藻土は輻射熱が出て、そのうえ
脱臭効果があるので、生活臭を消臭してくれる。さらに吸音効果もあり、吹き
抜けやドーム空間でも残響音を調節できる優れた壁材である。 

 「きっちりと丁寧に」といった工芸的なアプローチではなく、ざっくりと
おおらかな、風土の底力がつくりだしたような建築 を目指した。  







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